着替えを済ませて更衣室を出たけど、先生もクリスもまだ出てきていないみたいだ。
おっかしいなー。だって、私だって一時間以上はお風呂に入ってたはずなんだけどな。
女の子はいてもたってもいられないように、私の服の裾をぎゅーっと握って離してくれなさそうだ。
困った私は、先生とクリスにメールを入れてから、その子に着いていくことに決めた。
あ…。そう言えば、この子の名前を知らなかったな。
屈んでその子の目線に合わせて、改めて名前を聞いた。
「お姉ちゃんはね、‘かのん’っていう名前なんだよ。あなたのお名前は?」
さっきの海岸でお爺さんを振り回していた小悪魔ちゃんだとは思えない、小さな声で女の子は呟いた。
「……ゆず。ゆずきって、言うの」
ゆずちゃんか。黙ってれば可愛いなぁ。だけど、さっきのイタズラは、どう見てもやりすぎだったね。
「じゃあさ、《ゆず》って呼んでもいい?」
ゆずはこくん、と頷いて、私の掌を可愛い力で強く握り締めた。
「かのんちゃんに、ヒミツのばしょをおしえてあげる!」
ようやく笑顔をみせてくれたゆずに安心して、先生やクリスがお風呂から上がる前に戻れば良いか、と楽観した私は、ゆずの後に続いた。

