「唇と指舐められた」

「っ……ハアァァァ!?」

「私だけにしかしないとか言って、常習犯じゃね?」



舞に言うと大口を開けたまま驚いていたが、かなり経ってから復活した。


「……アンタだけにって言ったの?」

「うん。女関係だらしなさそう」

「唇と指まで舐められて」

「うん。気持ち悪かった」


舐められて、ぞわりとした自分も、だけど。


「……それってヤバくない?」

「うん。私もそう思う」


変態でもカッコいいのかぁーでもなー、などとぶつぶつ独り言を漏らす舞が何を考えているのか、さっぱり分からない。




第一あの先生がイケていようがイケていまいが、どうでも良くないか?


なんて考える私はやっぱり私は《変》なんだろうか?



例えば昨日、ファストフードやファミレスにいた周りの女の子達は、みんなアキせんせーの事をチラチラ見てた。

けど、それからどうするの?付き合って下さいとかストレートに言うの?その後は?顔が悪ければ見向きもしないの?


………なんで、よく知りもしない相手をそんな目で見れるんだろう。それからして分からない。



「アンタさぁ。アリかも知んないよー?」


舞の一言で我に返った私は、コイツが何を指しているのか分からず、こてんと小首を傾げた。


「アリ……って、何が?」


はあぁぁ、と、肺が空になるほど息を吐き出した舞が私の髪の毛を一房軽く引っ張った。


「アンタそうしてれば、フランス人形みたいに可愛いのに。付き合ってみればいいじゃん。その変態センセーと」

「は!じょーだん!?」



冗談じゃない、なんであんな変態と!!


「アンタ知らないでしょ、オトコ」

「兄貴がいるもん!」

「じゃなくて、カレシいたことないっしょ?付き合って色々教えて貰ったら?」



昼休み終わりのチャイムに立ち上がりながら、舞はとんでもない事を言い残して一人だけ去っていった。



「エロい事も、お勉強しといでよ」