深層融解self‐tormenting

傷は4センチ位の切り傷だった。タオルで拭いて貰うとやっぱり少し痛いかも。



持ってた絆創膏を貼ったけど、傷口が大きくてあんまり役にたたないや。



濡れ鼠のままそこに留まるのも気持ち悪かったから、着替えに車まで戻りたい。



先生に言って車に向かって歩きだすと、さっきのお爺さんが私たちを呼び止めた。




「うちの孫のせいで、誠に申し訳ありません。時に、あなた方はどちらかにお泊まりのお客様でいらっしゃいますか?」


なんて聞いてきて。



「『望洋荘』って旅館に泊まるけど?」


何の疑いも持たず私達が止めるのも聞かず、クリスは馬鹿正直に泊まる旅館の名前を教えてしまってる。


「それならうちの旅館のお客様でございますね。孫がご迷惑をお掛け致しましたので、すぐ浴場の方をお使い下さい」


そう言ってお爺さんは懐から名刺を差し出した。


それには『望洋荘 支配人』って肩書きがちっさく載っている。


孫に弄ばれてる時にはフツーのお爺さんにしか見えなかったけど、なんか凄い人だったのか。

見かけによらないよなぁ。



「それってタダなの?」


ちょ、クリス!はっきり聞くな!



「勿論でございます。そのままチェックインされると宜しいかと……」

「お言葉に甘えます。コイツ、こんなナリじゃ風邪引いちまう」


先生がバスタオル毎私を抱き寄せて包み込んだ。



「ではご案内致しますので、こちらへどうぞ」


にこにこと笑う支配人さんは好好爺という言葉がぴったりだな、なんて考えながら、その後に着いていった。