お風呂から上がると、携帯のディスプレイがチカチカ点灯してて、着信が入っている事を知らせていた。


「はいはーいもしもしー?」


本当に迂闊なのだが、今日の昼、あれからアキせんせーのアドレスを着拒設定にするのを忘れていて。


そして昼間、あんな事をされたのにも関わらず、無用心にも相手を確認しないで携帯に出てしまっていて。


『遅ぇ。どんだけ待たせるんだよ?』


携帯、切ってもいいよね?


『ちょ、待て待て!!切んな!俺の話を聞け!』


げ。なんで心の声が分かったんだろ?


「……アキせんせーと話す事なんかなんも無いっす。切っていいですか?」

『ダメ。あのさ、今日はすげー楽しかった。姉さんも喜んでたし』

「私は変態に指まで舐められて気持ち悪かったです」

『うん。そこは《ご飯ご馳走して貰って嬉しかったです。かっこはあと》な。でさ、話違うけど、お前数学の家庭教師、要らね?』

「要りません」

『分かった。今度の日曜日、今日と同じ時間に教えに行くから。親御さんとかいんの?』


待て待て待て待て待て!!


話が全然噛み合ってない!!


「親いないし!てか、今度は何企んで」

『お前に勉強教えてやるって言ってんの。現役の教師が』

「要らない!!」

『なんて言える成績じゃねーよな?はい、今度の日曜日、10時に華音ちで特別授業決定。逃げんなよ?お前、それ以上成績落としたくねーだろ?」



フッと鼻で笑う声が漏れた。馬鹿にした!!


「じっ…自分でできるもん!」


赤点常習の私が崖っぷちなのは代わりないけど、こんなヤツに……。




『タダで、教えてやるけど?』

「……むぅ……」



こんな…ヤツに……

『俺が教えたから、こないだ良い点取れたんだよな、小テスト』

うううー!!

確かにあの時教えて貰ったたった一回で、テストは平均点を大きく上回ってた。

教え方は上手いんだろうなんといっても現役数学教師だし。

でも変態なんだよ!

何もしないとはいってるけど……。けど……。