深層融解self‐tormenting

気が遠くなるような一瞬。


目に飛び込んできたのは………。








雪と同じ色をした疾風。




続いて、クリスのランチア。





先生が、勝ったんだ……。



後ろを振り返る前に、逆に後ろから抱き竦められた。

ランチアから、クリスが降りてきて苦笑している。


「……アンタに負けても、何でだろ。今は、全然悔しくない。……だから、カノンの事」

「……お前に言われるまでもねーよ。つーか、お前は俺より凄ぇ奴だと思うよ。同じ年の頃、俺はお前ほど上手くはなかった」

「はは。ありがと」


私の胸部に回した手をほどいて、先生はクリスの肩を軽く叩いた。


私も、クリスにゆっくり近づいていった。



少し背伸びをして、クリスの頬にキスをする。

「……ありがと、クリス。狡いお願いだけど。でも、これからも、仲良くしてくれる?」


それは、友人として。


クリスが帰る三学期の終わりまでは、友人として一緒に過ごしたい。


自分でも我儘だと分かっているけど。


「ホントにワガママなお姫様だよ、カノン」


私の頭を撫でてから、春臣を乗せてクリスは車で去って行った。