仕方ないと諦めて、自分も厚手のコートを羽織り、ニットの帽子で耳まで隠した。


「準備出来た?じゃー行きますよー!」


春臣が、引率のバスガイドみたいに先頭に立って歩いて行く。

雪は深く、ブーツでも足を取られそうになる。


先生の車に乗ると、車はスキー場の正面へと走り出した。


「サーキット場の管理人には話をつけて、借りてあるから邪魔は入らない」


先生はそんな事いってるけど。


なるほど、確かにサーキット場があるから交通違反になるわけじゃないし、対向車の心配もないけど。




「コースは一回走れば、俺もアイツも大体勘で分かるだろ」




なんて先生は気楽に言ってるけど、大丈夫かな……?



除雪されたとは言え、サーキットのコースはアイスバーンやミラーバーンで光ってる。



それに、降りしきる雪で視界も悪いのに。




俄に停めた車の中で、先生が私に聞いてきた。


「お前、スタートラインで待つのと、ゴール地点で待つの、どっちが良い?」



私は躊躇いもなく、それに答える。



「……ゴール地点の方が、良い」

「分かった。なら、このままゴール地点まで連れて行って、お前を降ろすから」



再び走り出す車の中で、回りを包む暗闇と、車のヘッドライトに照らされて、まるで蛍のように舞う雪を眺めていた。



やがて車が停まり、私は一人ぽつんと何もないコースの端っこに佇んだ。