紅茶のお店にはまだ桜の茶葉が売ってあって、温和さんはそれを買っていた。

私はと言えば、工芸茶が欲しくて、その茶葉売り場の前でずっと動かなかった。

茶葉のテイスティングをしてみたり値段を見て溜め息をついたり……。



工芸茶とは、実のような形に加工されたお茶で、お湯を注ぐと茶葉が綺麗に花を開かせる。

その花開く行程までが美しい、味も香りも楽しめる麗しいお茶だ。


そして、麗しいだけはあって―――高い。

値段が。たかが嗜好品に女子高生が出せる金額ではない。

いや、あるけど、お菓子を買うお小遣いを削ってまで……となると躊躇する。

でも欲しい!!でも買えない!!


かなり長いことその工芸茶を眺めていたら変た…アキせんせーがテイスティングしていた私の手元を除きこんだ。


「……?なにこれ?」

「工芸茶。綺麗で美味しいらしい」

「ふーん。で、どれ?」


は?いや、今手に持ってるのでお願いします。

「じゃ、これ2セット下さい」

「じゃなくて!!なんで!?」


アキせんせーはさっさと私の手から茶葉を取り上げ店員さんに渡した。


「確かにこれ欲しいけど買って貰う理由ないし!!そんで、何でもう1つ買ってんの!?」

「あ?これは姉さん用。つか、この場合『お前が煎れたお茶、朝一緒に飲みたいな』になんのか?」

「は?」


意味分かんないし!


「まぁ、次にお前ん家に行く事あったら、そん時煎れてくれよ、つー事」




そんな日二度と来るもんか。