「つーか、凱。お前は、どうやってあの店にたどり着いたわけ?」


挨拶もそこそこに、春臣が切り出した。


「解体屋から。盗難車を解体してそうな奴等から色々聞き出しては、一つ一つ奴等の傀儡チームを潰していってたんだけど、埒が明かなくてさ。最後に当たった整備工場にブラジルのガキがいて、ソイツに全部聞き出した。薬事法の事はよく分かんないから、薬物の事は鷹嘴さんに頼んだんだけど、そっちもよくあの店が分かったね」

「たまたまS高にブラジルからの留学生がいた。俺らじゃ怪しまれるから、クリスにあの店の中に入って貰ったんだよな」

「………いきなり『クスリ、要るだろ?』なんて勧められて驚いた。上手く逃げたけど」

「岩さんに通報しといたから、あの店の関係者は、取り敢えず身動きとれねーだろ。ブラジルの少年君達は、鴟嶋組の方で落とし前つけさせるって言ってるしね」



とうとう暴力団まで出てきたんだ。


まだ震えてる私の手を、先生が握った。


「華音はもう、帰して良いですよね?」


先生がそう言うと、春臣が「お前もう、明日はサボっちまえ!!」なんて、とても教師とは思えないことを言い出すもんだから、可笑しくなってつい吹き出した。



先生とクリス、二人に挟まれて真っ暗な家に電気を点けると、ようやく安堵感が押し寄せた。



「二人とも、ありがと」



可愛いげがない事しか言えないくせに、握った二人の服の裾を、私はいつまでも離そうとはしなかった。