「ぅひ!!」


思わず呆然としてその犯人を見ると、目の前の男はニヤリと笑って「生クリームついてて、すげー旨そうだったから」などとほざいた。



「ちょ、な、わ…ふぁ!!」


『ちょっと、なんで、私のファーストキスを!!』が言葉にならない。


………返せ!!


「ついでに言うとさ、」


目の前の悪魔を警戒していた筈なのに、迂闊にも私の左手はヤツに掴まれていた。

そしてそのまま……。

「ん。甘い」

指を1本1本舐められて……。

「さっきメロンを左手で取ったろ?」



……拭けばいいじゃん普通に!!


ああ、これ何?なんでこんなに心臓ばくばくしてるんだ?落ち着け、深呼吸だ。



「可愛いな、お前ホントに」



可愛いってまた言った!!


生まれてこのかた可愛いなんて言われた事………何回かあるけど。



告白された時にも、何回か言われたけど。けど!!


こんなにばくばくしなかったよ!

「何、お前。顔が赤いけど?」

「っ誰のせいで!?」

「………俺のせい?」

「アンタしかいないだろ!」

「……意識してくれた?男ってやつ。ついでに言うけど、お前マジ可愛い」



意識したのはアンタの事だよ!


って、ちょっと待って?


余裕で頬杖をつくその姿が、様になっているのは認めよう。

周りの席に座る女の子達が、顔を赤らめてアキせんせーを見てるし!


足が無駄に長いし!イケメソだし!だが、よく知りもしない女の子に向かって『可愛い』などと言える男を、どうして信用できようか!?いやできるわけないだろ!?




「私、軽い男の人嫌いなんだよね」

「あ、俺も。軽い女は嫌い。こんな事したのもお前が初めて。体が勝手に動いた。お前見てると自分が止めらんねぇ。つー訳で、俺にも携番とアドレス教えろ」


……その後、嫌だ、教えろ、をすったもんだした上、油断した私の手から携帯を奪い取ったアキせんせーは、無理矢理お互いのデータを交換した。


【櫻 蒼季】の名前がアドレス帳に加わったけど、誰がこんなヤツに連絡なんかするもんか!!

「……今晩連絡するから、お前必ずでろよ」


速攻着拒だ!!!!