深層融解self‐tormenting

その時、誰かの携帯が、ぴるると鳴った。


「あら、私だわ。ごめんなさい、私ちょっと出てくるわね」


そう言って温和さんは、そそくさとファミレスの外へ移動してしまった。



それを見届けたアキせんせーが、コーヒーを飲みながらボソッと言った。

「……お前はさ、誰か男と付き合おうとか、思わねーの?」

「またその話?」


だから、まだ恋とかよく分かんないんだってば。



……って言ったらまた馬鹿にされそうだから。


「………興味ないもん。男の人に」



無難な回答をした。



「どんな奴なら興味あるわけ?」

「……うちの兄貴より強いやつ」


heavenの凱に勝てる男なんて、絶対いないんだから。

そこだけは自慢できるし!


むしゃくしゃする気持ちと一緒に、パフェのメロンを咀嚼した。

このパフェ、中に生の果物が入ってる!なんて上品なスイーツなんだろう!


幸せな笑顔で生クリームを一口ぱくりと食べたら、またアキせんせーが聞いてきた。


「お前の兄貴って、何者だよ」

「んー。知ってるかな?昔、heavenってチームのトップだったヤツで、凱っていうの」



思えばこの肩書きに何度泣かされた事やら。


「……heavenの、凱…ね……」

ところがアキせんせーは、何やら深く考え込んでしまった。


「知ってるの?」

「まぁ…俺らの世代じゃ知らない方が不思議だったからな。凱の名前は。ついでに、俺は凱とタメだしな」

「ふーん。兄貴と同い年かぁ……。んで、そんなに有名だったんだ、うちの兄貴」

「ん……。あ、お前」



ん?何?


顔を上げた瞬間、生温くて柔らかいものが上唇を這った。