やがて午後も何事もなく過ぎ、鷹嘴先生が指定した放課後になった。


指示通り理科準備室に行ってみると、もうもうとタバコの煙が立ち込める中に、鷹嘴先生が佇んでいる。



「おぅ。来たな。まず、座れや」

そう言って、パイプ椅子を指差した。

如何にもぞんざいに扱う先生の真意が読み取れない。



「……昨日の件と、何か関係あるの?」


クリスがそう口火を切った時、鷹嘴先生が、吸いかけのタバコを灰皿に押し付けた。



「……昨日の奴等な、結構根が深くて、片付けるのに手がかかりそうなんだ。そこんとこは、春臣に聞いたと思うが」


業を煮やしたクリスが急かす。


「で、何が言いたい?カノンが狙われるとでも?」

「正解。雲母から、目を離すな。それと、家と学校以外は出歩くな」


鷹嘴先生はまるで問題を解いた生徒を見るように、クリスを見て頷いた。


「……カイが昨夜から帰って来ないけど、それも関係あるの?」


そう、昨夜は連絡もなしに、兄貴は帰って来なかった。

今までにもこういう事はよくあったし、私は然程心配もしていなかったけど、クリスが何故か非常にナーバスになっている。

それを見ると、こっちまで妙に神経質になってしまうもので……。



「まぁ、関係あると言えば、ある。ところでお前ら、昨日の昼間は凱とどこに行ってた?」

鷹嘴先生が、クリスに向かってそう聞いた。