春臣は低く唸りながら、こう言った。

「アイツら、こういうやり方で最近荒稼ぎしてる奴等の傀儡チームの一つなんだよな。カネの出所は、ああした違法な薬物や酒。凱は元々そういう怪しげなモンが嫌いだから、戦闘屋としての自分の力量だけでheavenを拡大させたわけだけど、凱を目の上のタン瘤みたいに思ってる奴もいる。そして、薬物や酒で得たカネで、余るほど兵隊を雇える奴等もいるんだよ。で、凱に敵対する奴等が今回結託したらしいんだが……」



「凱が、狙われてるって事?」



そう質問する先生に、春臣は私を見ながら答えた。


「華音が今日、あのクラブで、自分は凱の妹だって名乗っちまってる。となれば華音の顔も割れちまった訳で……」


「カノンも、狙われる…?」


クリスの呟きは、質問ではなく確認で。


「今度の奴等は、今までお前に絡んできた三下とは違うって事、肝に命じておけよ。華音」

と、春臣が締めくくった。

え、すると何?私は、兄貴のトラブルに自分から首を突っ込んじゃった訳!?


不本意なのに!!行きたくて行った訳じゃないのに!!

大体、巻き込んだ張本人の舞は昨日鷹嘴先生に良いように言いくるめられて、頭がお花畑になってるじゃないか。どうしてくれる!?


一時間目は物理だったが、なに食わぬ顔で入ってきた鷹嘴先生を軽く睨んだ。


そんな私をチラリと見ると、鷹嘴先生は「雲母とクリス、放課後、理科準備室に来い」などと仰った。



やっぱり、昨日の件かな?






昼休みに、高梨君と職員室に行って入試の合否確認をしたら、受験には合格していたものの。


本来ならば嬉しい筈なのに、それが半減しているのは、やっぱり昨日の……例の件のせいだろうか?