深層融解self‐tormenting

でも、私には先生がいるんだから、クリスがモテるからって、嫉妬や焼き餅焼いたって、そんなの狡いだけだよね。


仕方ないじゃん。


クリスとは小さい頃からの仲でも、好きになってしまったのは先生が先だったんだから。


本当はクリスも誰にも渡したくないなんて、そんな贅沢な気持ちは、封印しないと絶対駄目だよ。

「……財布とか良くね?」

如何にも投げ遣りに舞が言ったけど、それはいい考えのような気がした。

結局クリスへのプレゼントは、カービングデザインレザーウォレットとか言う革を手彫りにした、見た感じカウボーイっぽいヤツにした。

ドロップハンドルが着いてるとこが、ちょっとチャラっぽい。


それをラッピングして貰い、次は先生へのプレゼントを買いに紳士服売り場の中を移動した。




外国の若手デザイナーが、ここ4~5年前に立ち上げたブランド。

そこのネクタイにしようと、前々から考えていたのだ。


その店に行き、何種類もあるネクタイの中から、先生が好きそうな色のを2本選んだ。

それには、私が用意したメッセージカードをいれて特別にラッピングして貰った。



プレゼントが用意できた事で、ホクホクした私が舞の元に戻ると、舞が不審者のようにマネキンに身を隠している。



………何やってんだ、コイツ?



私に気付いた舞が、「しー」と口に指を当てて、黙っているよう促した。


舞に近付いて、その視線の先を追っていくと……。


そこに居たのは、見るからに柄の悪い人達に囲まれた

―――――鷹嘴先生だった。






「なんかさ……。鷹嘴先生、ヤバくない?」

そう問いかけて舞を見ると、舞も少し顔色を変えていた。

「なんかあれ……。ヤバい雰囲気だよね?」


鷹嘴先生が何をしたのかは分からないが、どう見てもカタギとは言えない人達に囲まれてるのは事実なので。

ここで放っとこうかとも思ったが、舞は後を着ける気満々だ。仕方ない。付き合うしか無いのか。