舞には色々お世話になったし。

鷹嘴先生と舞がどうこうなるとは思えないけど、とりあえず舞の恋を応援しよう。



「鷹嘴先生、まだいる?」

「いるいる。もう一時間もこの店から動いてない」


電話で指定されたコーヒーショップに行ってみると、舞が植木に体を隠して私を手招きしている。


「私服の鷹嘴先生、超カッコいいよね!?でしょ!?」


ごめん。『でしょ!?』って言われても、私には蒼季先生の方がカッコいいと思います……。

なんて舞には言えないか。


「……まぁ、イケてるよね、美術の鬼丸よりは」

ちなみに鬼丸は四十代の、如何にも芸術家肌の、親父臭い、ウザい先生だ。


「ちょ!!鬼丸と鷹嘴先生を一緒にしないでくんない!?失礼にも程があるわ!!」

眦をギンギンに上げて舞が私を睨んだ。ごめん、例えが悪かったね。


「って!ちょっとほら!鷹嘴先生を見失ったじゃないよー!」


ふと見れば、舞が言う通り、さっきまで鷹嘴先生がいた席は空席になっていて、鷹嘴先生が既に店内にはいないことを物語っていた。


「あ…あー。ごめん!また今度付き合うからさ!」


はははーと作り笑いをしてみたが、舞のご機嫌は、チェーンアイス店の季節限定フレーバーを私が奢るまで、治らなかった。



「ついでだからさ、ちょっと私にも付き合ってくんね?」

アイスを掬って食べてる舞に、私はそうお願いした。

「付き合うって……何に?」

先生とクリスの板挟みになっている今、一人で出掛ける時間など、ほとんど私にはない。