深層融解self‐tormenting

ぼやん、と考え事をしていたら、クリスがやけに嬉しそうに笑いだした。


「何?どうしたの?」

「いや……。何でもない。今から飛ばすから、どこかに掴まってて!」



そう叫ぶや否や、クリスは車を急加速させて山道のカーブを大きく曲がった。




響くドリフト音。



続いてもう一つ、同じような音が後ろから聞こえた。



地の底から響くような、低い重低音のエンジン。




この音を、私は知っている。



後ろを振り返ろうとしたら、クリスに「まだ駄目。前を見てて」と言われ、首を竦めて前を見た。




でも、耳で聞いただけでも、分かる。


カーブを曲がる時に鳴るキイっと言う小さな音や、枯れ葉を踏んづけて走るタイヤのダイナミックな音。



インプレッサが、後ろにいる。