……あー。そう言えば。人相が悪い五、六人の男子高校生に絡まれた気がする。
みんなガタイが良い割にはチャラチャラした奴等ばっかりだったけど。
確か「heavenの凱(かい)の妹ってのはテメーか!?」とか言われてた気がする。
だとすれば。
「今日も不良に絡まれたのは兄貴のせいだろ。いい加減にして欲しいんだけど?止めさせてよ」
「わり。無理」
にっこり笑って小首を傾げる兄貴を見るに、罪の意識など持ち合わせていないことは一目瞭然だった。
最早呆れ返って言葉を無くした私は、黙って飲み物代も払わず店の外へ出た。
家に帰る途中で気が付いた。
明日は学校が休みだから良いとて、月曜日には数学の小テストをすると言い渡されている。
ヤバい。勉強しないと。
こういう時はマジで頼りにならない兄貴の凱ではなく、とっても頼りになる隣人にお願いするのが一番良い。
隣校のS高校の教師、宮藤春臣。
春臣はオンナ癖が悪くて女子生徒にまで手を出す不届き者だが、小さい頃から懐いていた私には滅法甘い。だから、物を借りたり勉強を教えて貰ったりするのも茶飯事だ。
帰ってみると、まだ春臣の家の灯りは点いていなかった。しばらく様子を伺っていたら春臣は帰って来たものの、酔い潰れている上に連れが四、五人いるらしい。
あ、今日駄目じゃん。
仕方がないから春臣に勉強を教えて貰うのは、明日にしよう。
その日は勉強を教えて貰うのを諦めて、クリアしていなかった乙女系のゲームを起動した。

