深層融解self‐tormenting

面接ではイタリアのお婆ちゃんがワイナリーを営んでいることや、イタリア語で日常会話が出来ると言う事をアピールして終わった。



そして試験と面接、全てが終わり、帰路に着いている今。






受験会場の前で、私を待っていたのは……


―――クリス。



「……終わった?カノン」

「うん。……これで25日の発表までは気が抜けない日々が始まるよぅ!」

「カノンなら、きっと大丈夫だろ。昔から悪運強かったし」

「えー。何それ?貶されてるようにしか聞こえないんだけど」



むー、と頬を膨らませてクリスのブレザーの裾を引っ張った。

クリスは嬉しそうに少し笑っている。


「……どっか、行こうか」


私がそう言うと、クリスが私を見て言った。


「良いけど。カノンは、どこに行きたい?」


うーん。私が今行きたい所……。あっ!!



「映画なんか良いな。観たい映画があったんだよね。少年漫画原作のやつ。受験だったから、ずっとテレビもDVD も我慢してたからなぁ」



今まで受験勉強に根を詰めていたからか、一気にその反動が来たみたいだった。


とにかく遊びたくて仕方がない!



「……その映画だけで良いの?どこかで食事しない?」

「良いね!クリスは、何食べたい?私が作るよ?」


最近はカップラーメンとか惣菜しか出してなかったからな。

クリスが好きなもの、何でも作ってあげよう!


「……その映画館の前の、イタリア料理店が美味しかったって。マイが言ってた。そこに行こう?今日はカノンのお疲れ様会だから」

「えー。作るからいいのに。でも、とりあえず行こっか」

「ん」




クリスが差し出した手を、私は軽く握った。クリスの手は暖かくって、カイロみたいだと思った。