そして顎を持ち上げ、ゆっくり唇を重ねる。でも、それだけじゃ足りないんだ。


舌をその口の中に入れて蹂躙したら、カノンが艶っぽく喘ぎ出した。


「んっ…ふぅっ…」


カノンが俺の胸をドンドンと叩いて、苦し気にしていたから、その体を解放した。



「……っ…クリス!ダメだよ、ルール違反でしょ!?キスとか……」

「前に山でアイツとカノン、俺の前でキスしてた。だから、一回だけ。それに……」
「それに、何?」

「今日のカノン、特別に可愛いから。我慢できないよ」



俺がそう言うと、カノンは顔を真っ赤にして俯いた。



「クリスの方が、カッコいい、よ」


小さな声は、聞こえるか聞こえないかぐらいで。


それでも構わず、俺はカノンをもう一度抱き締めた。




「すっかり遅くなったねー!」

「走ると転ぶぞ」


カノンは危なっかしく、縁石の上に上っている。

「どうだった、クリス?文化祭、楽しめた?」

「……うん。カノンのお陰で、楽しかった」

「もう少し早くに回りたかったよね」

「俺達、忙しかったからね」

思い出してはくすくす笑い合う。



「でもさ。ホントにカッコ良かったよ!クリスの執事さん!」

そんな事ないよ。カノンのドレス姿の方が、可愛かった。


振り返ったその顔に自分の顔を近づけて、もう一度キスをした。




「このキスは、誰にも内緒」


アイツも知らない、秘密のキス。