明け方、空が白みだしてから、やけに煩いエンジンの音が聞こえてきた。


静かな朝には不釣り合いすぎる程の爆音だろ。


それはやがて、この家の前に来て止んだ。続いて、静かに玄関の扉を開ける音。




カノンが帰ってきたのだと知り、急いで玄関に向かう。




だけど彼女は………。



「今寝てるから起こしたくない。部屋に連れてく。そこ退け」


アイツの………。アキの腕に横抱きにされて、ぐっすりと眠っていた。



「……もう用は済んだだろ?早く帰れよ」



カノンを部屋に運び、ベッドに寝せた後も、まだ帰らないアキに苛立って、さっさと帰るように威嚇した。



「……昨日のルール」

「は?」

「昨日の勝負のルールに一つ加えろ」

「何を?」



それまで此方を見ようともせず、カノンの頬を撫でていた手を引っ込めて、アキが俺を見据えた。


「その勝負にケリが着くまで、お互いに華音には手を出さない事」


俺を真っ向から睨んだその目には迷いが無かった。だけど、昨日は………。