「……こないだ宮藤サンの家で初めて見た時から、コイツの危なっかしさが気になって仕方がないんだよ。ついでに言うと、数学の成績も危なっかしい」


ふぅん、と一口紅茶を啜ったお姉さんが、さらりと一番聞かれたくない事を聞いてきた。


「華音ちゃんは……。お付き合いしている男の人って、いるのかな?」


ニッコリ笑うその花のような笑顔には叶わない。

こういう人だったら、同性にも異性にも好かれるんだろうな。敵なんか、きっと、いない。


「いない、よ……」


お姉さんの笑顔を前に、嘘を言っても肩肘張っても仕方がない。

私に付き合う彼氏がいなくても、別にこの二人には関係ないし。


「いねーのか?」


確認するように、弟サンが聞いてきた。しつこいなぁ、もう。


「いなかったら、なんな訳!?」


絡み付くようなその視線は鬱陶しくて仕方がない。

なんだコラ、やんのか、戦りてーのか、何なら戦ってやっても良いんだけど!?

お姉さんの前で恥かきたかったらかかってこいや、オラ。


「……いや…。てっきり彼氏の一人や二人、いるもんだと……」

「お姉さん、お宅の弟サンの頭、大丈夫ですか?こんな無垢な少女を捕まえて二股かけるようなビッチに妄想してますよ?」


弟サンの妄想力には感服しよう。

だが、それは許せる妄想ではないが。もうコイツ殴っていいよね!?


けれど、お姉さんはクスクス笑ってそれを見ただけで、また一口、紅茶を啜る。


「華音ちゃん、この紅茶、すごく美味しい。どこのお店?」


流石お姉さん空気が読める人だ!それにこれは季節限定の一品ですよ!


「最近できたSCの中にある、紅茶専門店の、春の限定品ですよー!」

カップから顔を離したお姉さんが、今度は優雅に香りを嗅いだ。


「桜の、甘い香りがするのね。華音ちゃんの好みかな?」


やっぱり分かる人には分かるんだ。

自分の思わぬ『女の子らしいところ』を、目の前で、素敵な女性に言い当てられて、思わず真っ赤になって俯いてしまった。

キャラじゃないって分かってるもん。いつもだったらヤンキー相手に喧嘩三昧なんだもん。