深層融解self‐tormenting

だとすれば。



「……ラリーでアンタと、勝負したい」


やはりな。


流暢に話す日本語は誰に教わったものかは知らないが、奴の強い意志だけは伝わってきた。




つまり、コイツは俺とバトルがしたいのだ、と。


俺のインプレッサと奴のランチア。


華音を賭けていなくてもこの勝負を投げる真似はしない。

第一、華音を賭ける気なんかハナっから考えてもいないが。



「……いつでも良いけど。言っとくが、ここは俺のホームだぜ?」

その意味分かってんだろ?

この近隣の峠や山道なら目を瞑っていてもクルマを転がせる。

わざわざアウェイに来てまで宣戦布告する事の意味するもの。


「分かってる。だから場所と日時は俺が指定する」



ハンデとしては妥当だろう。どうせヤツには凱がサポートに付くんだろうしな。

「……いいだろう。受けてやるよ。お前とのバトル」


ただし、今度は華音を助手席に乗せないで、全力で叩き潰しにいかせて貰う。


「雪が積もってからが、いい」

「あ?」

「雪が積もれば、道路状況がまるで変わってくる。だとすれば、いくらアンタでも夏場のように、峠を攻められないだろ?」



まぁ、確かに当たってるけど。雪道には雪道の攻略法ってのがあるし。



つーか今、雪が積もってからって言われなかった?………と、いう事は。




「新学期から俺はカノンと一緒の学校に通う。来年の春までは凱に頼んで、カノン達の家に居候させて貰うことにしてる。だから」


『お前には、負けない』


そう言って、クリスが俺の上にでかい爆弾を落としてきやがった。