最初はいつもの通り、ただ走りたい奴がバトルを吹っ掛けてきたのだとばかり思っていた。
相手のクルマをこの目で確認するまでは。
ランチア。
WRC で何回となく優勝したにも関わらず、その名のついた車がこの狭い日本を走ることさえ稀だろう。
だからこそ、助手席に華音が乗っている事を忘れて、つい走り屋魂に火がついてしまったのだ。
結果、ソイツに左回りを掠られて車体が揺れ、華音が頭を打ってしまったことで、かなり冷静になれた。
華音が乗っていなかったら、きっとまだガチバトルの最中だっただろう。
俺が華音の体を心配した時、「ソイツ」が助手席のドアを開けた。
華音はソイツの事を『クリス』と呼んだ。
コイツが、華音にちょっかい出してた例のイタリア人かよ?
呆然としてソイツを眺めていたが、ソイツが華音の顔に自分の顔を近付けようとしたところで我に返った。
「オイ、人のもんに手ぇ出してんじゃねーよテメェ…」
華音の頬を挟んだソイツの手を捩り上げながら睨み付けてやった。
それは勿論相手も同じことをしかえしてくる訳で。
「……まだ分かんないだろ?」
クリスとか言うソイツは、どこからくるのか余裕をぶっこいて手を払いやがった。
可愛げのねぇ糞ガキだ。
相手のクルマをこの目で確認するまでは。
ランチア。
WRC で何回となく優勝したにも関わらず、その名のついた車がこの狭い日本を走ることさえ稀だろう。
だからこそ、助手席に華音が乗っている事を忘れて、つい走り屋魂に火がついてしまったのだ。
結果、ソイツに左回りを掠られて車体が揺れ、華音が頭を打ってしまったことで、かなり冷静になれた。
華音が乗っていなかったら、きっとまだガチバトルの最中だっただろう。
俺が華音の体を心配した時、「ソイツ」が助手席のドアを開けた。
華音はソイツの事を『クリス』と呼んだ。
コイツが、華音にちょっかい出してた例のイタリア人かよ?
呆然としてソイツを眺めていたが、ソイツが華音の顔に自分の顔を近付けようとしたところで我に返った。
「オイ、人のもんに手ぇ出してんじゃねーよテメェ…」
華音の頬を挟んだソイツの手を捩り上げながら睨み付けてやった。
それは勿論相手も同じことをしかえしてくる訳で。
「……まだ分かんないだろ?」
クリスとか言うソイツは、どこからくるのか余裕をぶっこいて手を払いやがった。
可愛げのねぇ糞ガキだ。