深層融解self‐tormenting

確かに、こんなに大勢に囲まれて花火を見ても、煩いし風情とか無いよね。

それに、打ち上げ地点の真下とか近いとこだと首が疲れて大変そう。

「花火がよく見えそうな山に行くか。山の方がここより涼しいし」

「あ、山、良いね。どこか良さげな所、先生知ってる?」


ん?と下から先生を覗き見た。


「少し遠いけど、花火が綺麗に見えそうなとこがある。そこ行くか」

「うん。でも金魚すくいやってから行きたい」

「世話できんのかよ?その前に掬えんの?」


よくも馬鹿にしたな!


で、金魚すくいは先生に惨敗。私は三回もやったのに三匹だけ。

つまりお情けでおまけしてもらっただけだというのに、先生は一回やっただけで三匹も掬っていた。……悔しい。


「屋台の金魚は弱いから、ちゃんと水槽のセット買って育ててやれよ」

「うん、分かった!」

先生が駐車場へと歩き出したから慌ててその後を追おうとしたが、慣れない下駄を履いていたせいかよろけてしまった。


やだ、ここでコケるの!?とか、珍しく焦ったが、ふわりと脇腹を掴まれた。


「悪い。最初から手を繋いどけば良かったんだよな」


体勢を戻されると、先生の大きな右手が、私の左手を包んだ。

それから、お互いゆっくり撫でるように指を絡めて、手のひらを重ね合う。

愛撫するようなその手つきに、体が火照ってきた事は、先生にはあんまり知られたくはないかな?




「……うわぁ、花火……すご……」

「ここ、結構良いだろ?穴場なんだよな」

確かに先生が連れてきてくれた山は、民家もないし、街頭も少ないし、通行する車もほとんどいない。

だから花火と夜空がどちらも綺麗に見える。