悪戯心満載でガラリと病室の扉を開けると以外にも元気そうな兄貴がベッドの上に起き上がっていた。



「なんだ。元気そう」

本当は安堵して出た言葉なんだけど、言われた方はそう思わなかったらしい。


「何それ。俺がこんくらいでくたばる訳ないだろ。帰ってきて言うことがそれかよ?」

あらごめんなさい。可愛げ無かった?


「お婆ちゃんが兄貴にも会いたがってたよ。たまには顔を見せてあげなよ」


お婆ちゃんは兄貴と私がいつ来ても良いように、二人分のお皿を用意してたのはこの前知った。そのくらい心待ちにしてるんだ。



誰が見舞いに贈ったものなのか、縁起でもなくバラの鉢植えが窓辺に置いてあったから、可哀想になって少し水をあげた。


「………来年……」

「は?」


鉢植えに水をあげながら、兄貴の方を振り替えった。


「来年の春頃、向こうに行く」

「……そっか……」


お婆ちゃん、あんまり顔を見せない兄貴が来てくれたら、きっとすごく喜ぶだろうな。


「元気そうなとこ、見せてあげなよ」

「……お前、煩いよ。遊馬並みにウザい。アイツわざと鉢植えなんか持って来やがった」


遊馬だったか!!


「今日はもう眠いから、お前帰れよ」


兄貴は一言そう言うと、ごろんと横になった。


静かに寝せてあげようと思い、私はそっと病室を出た。