深層融解self‐tormenting

「やったぜ、ボス!!」

「彼女の前だもんね」

「メンテナンスが悪過ぎるだろ?」


クリスだった。



ヘルメットを脱ぎ、バイクから降りて、相手のデュリオと握手しながら、クリスは満面の笑顔で皆に応えていた。


先生と兄貴のバトルの時もそうだったけど、こういうのって女の子じゃ中々入れない世界だよね。


レースも終わり、時刻も既にすっかり日を跨いでしまっていたので、私はクリスに送られてお婆ちゃんの家に帰ることにした。



ベッティーノは相変わらず王子様スマイルを浮かべている。アイツ絶対女誑しだぞ。気を付けようっと。





「……どうだった?俺の走り」



お婆ちゃんの家に届けてもらい、バイクを降りてクリスにヘルメットを渡しながらそう聞かれた。


「凄かったね。バイクの走りは初めて見たけど、車とも違う面白さがあるっていうか……」

「……カノン、車のラリーを見たことあるの?」


ラリー?ラリーって何だ?


「ラリー……って言うか、バトルって言ってたけど、日本で」

「サーキット場を使うの?」


いや、あれは公道ですって言っても良いのかな?


「あの…。普通の道路、です」



しばらく考え込んだクリスは、やがて顔をあげて真剣な表情で聞いた。


「それを見せたのは、カノンの好きな人?」



あんなクレイジーな趣味持ってるの、先生以外に身近には居ないや。