その横には、同じぐらいの大きさのバイクとそこに佇む一人の少年。

「今からカルロのレースなんだ」


いつのまに来たのか、私の横にはベッティーノとエドアルドが並んで立っている。


「カルロは負けなしだよ。こないだもレースで五人抜きして勝ち抜いたからね」

にこやかにベッティーノが語る。

「マシンのコンディションも悪くないってさ、ボス。このまま今日はカルロに一人勝ちさせる?」

「ワケねぇだろ。デュリオもいるし、最後は俺が出る」


不敵に笑うクリスに苦笑したベッティーノ達が、私を安全なコーナーへと連れて下がった。

「どんな事故が起こるか分からないから、カノンは下がってて」

「そんなに危ないの?このレースって」

「衝突避けを張ってないから、ギャラリーでも危険だよ。まぁ、乗ってる奴等に比べれば安全ではあるけどね」


ベッティーノがふわりと私に微笑んだ時、エドアルドが叫んだ。


「っけオラアァァァァァ!!!!相手刺してこいやアァァァ!!」みたいな叫びだったように聞こえる。ここは競馬場か?


「カルロが走るんだよ」

さっきの王子様スマイルを浮かべて、ベッティーノが指し示した。


そちらを見ると、既にスタンバイOKの状態でさっきのバイクが2台、疾走の時を待ち構えている。


スタートはフラッグを振ることにより切られた。

カルロが後方、相手方が前方を駆け抜ける。

直線で差を詰めたカルロは相手の一瞬の隙をついて、左後方から密接した状態で相手を抜き去った。

カルロのレースを見た私も興奮していたようで、誰にも負けないぐらいの声でカルロを応援していた。