深層融解self‐tormenting

うわ。治安悪そう。やっぱ来なきゃ良かった。

普通の日本人観光客なら絶対足を踏み入れることはないであろう、うらぶれた町の、狭い路地裏。

その奥に、ドラム缶やら樽やらで作られた、秘密基地。



そこに、クリスの仲間達は、いた。



この風景は、アレだ、アレ。


兄貴や遊馬が昔よくやんちゃをしていた時によく見てた。そんな感じ。



まぁ、要するに、クリスも兄貴と同じような不良君だったんだ。

その基地には同じ年頃の男の子が5~6人、屯していた。目付きはそんなに悪くないけど、ヤバイクスリとかやってたら嫌だな、とか、殆どが黒髪なんだな、なんて当たり障りのないことを考えた。



でもさすがに、日本の不良君達とイタリアの不良君達とでは迫力が違うなぁ…。


その場にいる皆の身長の高さに唖然としながらキョドっていると、今度はクリスが、ぐっと、私の肩を引き寄せた。

ふわりと漂う、シトラスの香り。





「俺のオンナ。カノン。仲良くしてやってくれな」





あれ。今クリスの口から『俺のオンナ』って聞こえたけど、私、もしかして訳し間違えた?