だって、先生の部屋にもまだ上がった事がないのに、よく知らない男の人の部屋にあがるなんて緊張してしまう。



「あった。これ」



軽く投げるように渡されたアルバムは既に殆どのページに写真が貼られている。


4~5才位の私と、同じぐらいの年の男の子がブドウの木に登ってブドウを収穫しようとしているものや、それから数年後と分かる年齢の私達が、絞りたてのブドウ液を二人で飲んでいる写真、それにクリスがまだ幼げにも昔の面影を残しているもの、そんな感じの……。



「あ、あー!!思い出した!これっていつだっけ?ブドウ液をこっそり飲んで怒られたの!」


そうだ。確かにそんな事もあったあった!


「それは10才頃だろ。ようやく思い出した?」

「うん。そう言えば遊んでたね」



昔からやんちゃだった私は、このクリスと一緒によく色んな事を仕出かして大人の人達に怒られてたっけ……。


写真から一つ思い出が蘇るとそれに連携するように、次から次へとクリスに関しての記憶が蘇ってきた。


「カノンはさ、怖いもの知らずで、よくむちゃくちゃな事をしてたんだよな」

「えー。私、日本にいるよりこっちでの方が大人しいと思うけど……」

「小さい頃、収穫したブドウのコンテナに集まった蜂に向けて、殺虫剤撒こうとしたよな?」

「それいつ頃?」

「12、3才頃じゃなかったか?確か」

「その後クリスが蜂に刺されてなかった?」

「刺されたよ。あん時はかなり腫れた」



そうそう、そうだったっけ。