広いけど年季が入った家に着いて、お婆ちゃんが作ってくれた料理を全部食べ終わると、ブドウ園に行って、昔から働いてくれている皆に挨拶をした。


皆は懐かしげに私を囲んで思い出話に花を咲かせた。



「……うちの農園の方にも来いよ」



皆との挨拶が終わると、クリスが強引に私を引っ張っていく。



車の中であのキスマークを見つけてから、彼はどうやら機嫌が悪かったらしい。

私も自分からはクリスに話しかけたりはしなかった。


「写真とかあれば、思い出すんだけどなぁ……」



小声で呟いたつもりの一言は、しっかりクリスの耳に入っていたようだ。


「……ある、写真。うちに来いよ。見せるから」

「え、でも」

「いいから来いよ」



更に強引に私の腕を引いて歩く。


お婆ちゃんの家とは違い、かなり広くて部屋数もありそうなクリスの家に連れて来られると、さすがにちょっとドキドキしてきた。