今日はそのお孫さんも連れてくるのかな?


女の子だって言ってたから、日本からのお土産で、日本で人気のゆるキャラの靴下を買ってきたけど、喜んでくれるかな?



最後にもう一度持ち物を点検しようと(イタリアの治安を考えて)ボストンバックを持ち変えたら、車のクラクションが鳴らされた。



真っ黒な車。名前は……確か、アルファロメオだったっけ?

お爺ちゃんが昔持ってたよな。

日本でこんなのに乗ったら目立ってしょうがないだろうな……とか、こんな車に乗ってる奴にクラクション鳴らされるの恥ずかしいだろうなぁ……とか、ぼへーっと考えてたら、若い男の声が不意に私の名前を呼んだ。



「カノン!!」



……お前誰だ!?


私の目の前には、あのアルファロメオから降りた若い男が立っている。

元は黒かった筈の髪の毛に、明るいブラウンのメッシュを入れていた。鼻筋は通っていて、薄い唇とか色気のある切れ長の目で、この人が如何にも女ウケしてそうなのが分かる。



で。

この男の人は、どうやら私の事を知っているらしいが、生憎私はこの人に見覚えがない。


そう。

見覚えがないにも関わらず、目の前のその人に、いきなり私は強く抱きしめられた。


そして。


「……会いたかった……」


えっ?えっ!?


なんで良く知りもしない男に抱きしめられてんの、私!?