家の方に行こうかとも考えたが、コイツに話を通すにはこっちの方が良いだろう。


「……何の用?華音ならいないよ、知っての通り。それとも本気で俺に話があるわけ?」

「だからそう言ってんだろ」


目の前の凱は、にこやかに笑ってこの状況を楽しんでやがる。

俺が今日、何をしにここに来たのかなんて、コイツには全部分かってんだろうに。


「ゆっくり家で聞いてやろうかー?」


尚も小馬鹿にしたように凱が言う。


「……お前が、こういうやり方が好きそうだからここに来た。冷静に話が出来るんなら、黙って家に行ってる」




全く血の気が多い兄貴だぜ。



「……否定はしないけど。……お前、ヤってくれんの?」


挑発するように、鼻であしらう凱に頷いた。


「……俺が言いたい事は分かってるだろ?」



暫し無言で火花を散らす俺と凱。



「………お前が勝ったら考えてやんよ!」


言うと同時にタバコを吐き捨てて俺に向かってきた。

コイツまじ早ぇ!!



「……でもま、お前の思い通りにはいかなくても、俺を恨むなよ?」



なんぞと抜かしながら繰り出す一撃のスピードと重さは半端じゃない。


こりゃー俺も本気でいかねーとヤベェな。


挨拶替わりの右ストレートをギリギリのところで避けた俺は、ちっと舌打ち一つしてありがたく反撃をさせて頂くことにした――――――。