「で、相手の男に上手いこと転がされて、離婚するからって言葉を信じて待ってたら、その嫁さんは妊娠中。相手の男は離婚なんて口先だけ。完璧にセフレとしてしか見てもらえてなかった、と」

「……それで、なんで私達がこんな事になってんの?」

「今日、本人に聞いたら……」

「聞いたら?」

「最初は確かに俺とヨリを戻す気でいたらしいけど、俺にはお前がいるし。で、そんな俺らが妬ましくなったんだと。どうせ口では何て言ってもちょっとした事ですぐぐらつくクセに、幸せそうな顔した奴等がムカつくんだってさ。開き直って逆ギレされた」

「……歪んでるね、てか病んでるね」

「全くだ。いい迷惑」



でも、あの強かそうな泉野先生が、よく認めたなぁ。


「でも、結局最後は自分の行動を認めたんだ?」



良心が少しでも残ってたのかな?


「いや……。宮藤サンが、たまたまその相手の男と知り合いだった。情報源は宮藤サン。俺は宮藤サンから聞いた話をアイツに突き付けただけ。それを教えて貰ってなかったら、まだ俺達引っ掻き回されてた」

「こわーい」

「本当にな」


ぶふ、と二人笑って、もう一度抱きしめ合った。








――次の日。



「……何ちょっとスッキリした顔してんの、アンタ?」


ぎく。舞、鋭い。


「何もないけど?」

へー、と次の授業で使う教科書を出しながら「……華音もオトナになったのかー」と、図星を指したから思わずペンケースを派手に引っくり返してしまった。


……なんでバレたんだろう!?


「……ま、すべて世は事も無し……かな」


イミ分かんない。それ何の呪文?