「先生も、こんな気持ちも、恋も何もかも要らない!!もう嫌だ!私が私じゃなくなるもん!こんな真っ黒い私、私じゃない!」



思いきり先生の腕を払い、その囲いの中から逃げ出した。




だけど先生の動きの方が速かった。


先生の力強い手がしっかりと私の腕を捉えて離さない。


「……なら、俺の顔を見ろよ」


私は顔を背けたまま、それを頑なに拒んだ。


「俺の顔見て嫌いだって言えよ」


絶対に、見ない。


「ほら」

キッと先生を睨み据えて、言おうとした。


『先生なんか、大嫌い』と。


でも、言葉は……。


出てこなかった。


口が、震える。言葉にならない。




「き…ら、い……」

「もっとハッキリ言えよ。誰がキライなんだよ」

「せん、せ…いが……き……らい」



涙で先生の顔を真っすぐに見れない。


だから横を向いたまま、呟いた。




「……きらい……」


その途端、がばりと抱きすくめられた。


「本当に嫌いならなんでそんなに泣いてんだよ。ただひっぱ叩いて別れるって言えば良いだけだろ?」

「も…別れ、る……」

「出来んの?」

「だってもう、苦しいの……やだ。やだよぉ……!」



先生の胸に顔を埋めて、号泣した。


嫌だって言ったのに。


苦しいのに。


私が私じゃなくなるに。





それなのに、私は今、この胸にしがみつこうとしている。


「……ごめんな。辛かったな」


先生の手が、いつものように私の頭を撫でる。


それだけで落ち着くなんて。




それだけが欲しいだなんて。