腰まである髪の毛は、お婆ちゃんが好きだと言ってくれたから、ずっと伸ばしたままだった。

でも確かに、そろそろ切っても良いかも知れない。

「ちょっと出掛けてくる」

遊馬は無視して、兄貴に声をかけた。

私が髪の毛切ったら、みんなどんな反応するんだろ?

想像したら、かなり楽しくなってきた。



腰までの長さを肩の下辺りまで切って下さい。ついでにストレートにして軽く巻いて下さい。


そうお願いしたら、美容師さんの手が震えてきた。

だんだん疲れて来たかららしいけど。


そんなに私の髪が多いか!?重たいか!?




だけど、ブロー・セットが全て終わると、全くの別人みたいな私が表れた。



今までの自分は、取っつきにくい、冷たいイメージだったと思う。

けど、髪の毛を切った私は、どっちかと言うと可愛い系で……。多少ギャップに戸惑った。




え、これどんなキャラでイケばいいの?笑えばいいの、クールでいいの?


先生の家であんな事を経験した[あの日]以来、自分の感情を出すことが苦痛で仕方がない。


だから、学校に行って友人と笑うのも、泣くのも御免だ。

だから出来れば無表情な私を押し通したいんだ。




美容師さんに礼を言ってお金を払うと、担当してくれた美容師さんが名刺を差し出した。



「同じ名前、だったんですね」


彼女の名前は【三ツ屋夏暖(みつや かのん)】と言うらしい。