ニ択(選ばない)

「あいつを呼べ」

「い、幾多様?」

驚く女に、幾多は目もくれずに部屋から出た。

すると、目の前にロン毛の男が立っていた。

「やっぱり、あんたは最高の料理人だ」

ロン毛の男は、幾多とすれ違いに部屋に入った。

「頂きます!」

そして、ロン毛の男は合掌した。

ロン毛の男の名は、藤崎正人。

彼は、偏食者だ。



「い、幾多様…」

これから起こる出来事を思い、女はハンカチを口に押さえ、軽く嗚咽した。

「やつは、自ら何も選択しないと言った。そんなやつは、人間ではない。人間とは常に、悩み選択する存在だ」

幾多は壁を、叩いた。

「何も選ばないやつは、人間ではない!」

「い、幾多様」

叩いた姿で固まる幾多を見て、女は何も言えなくなった。

「すまない」

幾多の脳裏に、一緒にカフェで過ごした少年の姿がよみがえる。

「俺は、甘すぎた」

幾多はもっと強くなることを誓った。



次回。

偏食者に続く。