稀里side



「桜花高校の者ですが、先ほど柚葵さんが・・・。」




家でダラダラしながら、テレビを見ていたとき、その電話は掛かってきた。



「稀里兄、柚葵の高校から電話。」



万里から受話器を受け取る。


「もしもし?」


「あ、すいません。桜花高校の土田と申します。柚葵さんのお兄さんですよね?」


「そうですけど・・・。」


なんでここ、上城家に電話が来るんだ?


母さんにかければいいのに……。


「お母様にお電話したのですが、出られなかったので、連絡簿に書いてある、この番号に電話させていただきました。」



あの母さん、この家の電話番号知ってたのかよ。

しかも連絡簿に書くなんて。



「あ、はい。 それで柚葵がどうかしたんですか?」



「あの実は……。」



その先生がいうには、柚葵がかなり大きな事を起こしたらしく、柚葵を引き取りに来て欲しいとのことだった。




「分かりました。なら今から行きます。」



ありがとうございます。そういって、会話は終わった。




「万里、沙理。部屋の片付けしとけ。

柚葵を迎えに行ってくる。」



「なんで急に?」


沙理が首を傾げながら、俺を見る。



「なんか、やらかしたらしいから迎えに来いだってよ。」



「全く不良娘になっちまってよぉ。」


万里が煙草をふかしながら、寂しそうにつぶやく。


柚葵は小さな頃は万里、万里言いながら、万里の後を追いかけていた。


今ではそんな後影もない柚葵が万里にとっては悲しいんだろうな……。



「あーあ。全くだよほんと。」



そんなことを呟きながらバイクに跨り、桜花高校へ向けて、走り出した。