柚葵side
気づけばあたしの両腕は城東の先生とやらに捕まえられ、お説教をくらっていた。
「あなた、自分がどういう事をしたのかわかっているのっ!?
あなたに殴られたたくさんの子達はもう受験生なのよ!?人の人生を奪うって思っててもいいのよ!?」
うるさい。
そんなことは分かっている。
さっきやった事がどれだけの人を悲しませ、困らせたか。
きっと沢山の人があたしを恨むに違いない。
だけれど、人の人生を奪うのであれば、奴らだって航平に一生の傷を負わせたようなものだ。
心にも体にも。
「も、申し訳ございませんっ!」
荒々しくドアを開け、飛び込んできたのは我が校の校長先生と生徒指導のツッチー。
「事情はお聞きだと思っています。きちんとした処分を下すように、お願いいたします。」
目の前で繰り広げられる大人の会話に、あたしは放心状態だった。
このまんま退学になってしまうのかな。
そうなれば母さんになんて言われるだろう。
もともと余り行きたくなかったら丁度いいのかもしれない。
どちらにしろ、あたしにはいい道など残っていないな。
「香住さんっ、行くわよっ!」
ツッチー達の大人の会話は終わり、あたしは立たせられ車に乗せられた。
「ほんとなら、退学処分のとこなのよ。」
進む車の中、ツッチーがあたしに向かって喋る。
「でもね、あたしはこれがあなたの一方的な悪ふざけだとは思っていないわ。」
え…。
突然のツッチーの言葉にあたしは驚きを隠せない。
「桜花高校での賢明な判断だ。停学一週間で済まそう。だが、家の方には連絡させてもらう。」
それは学校を辞めなくてもいいということ。
「え、でもあたしっ!!」
「城東の奴らがした事も全て公になっている。君だけが退学処分ということになっても、きっと皆納得しないだろう。」
喜ぶべきか悲しむべきか。
ものすごく混乱していた。
チカチカ光る携帯を見れば柑からのメールで、
『退学処分?』
ってきていたから
『一週間の停学。』
と返せば、
『航平の見舞いいこうな。』
と返ってきた。
このメールを見て、あたしが泣きそうになったのは誰も知らないはず。


