柑side



「ゆ、柚葵がっ…!」


千奈津がリビングに駆け込んできた時は何事かと思った。




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「柚葵…。柚葵…。」



桜花高校の正門前、俺たちはここで柚葵を待っている。



今日、あの話し合いが終わってから柚葵は一人で城東高校に乗り込み黒幕を病院送りにしてから、先生に捕まったらしい。


そして今は桜花高校にて、指導中。



本来なら、このような騒ぎは警察沙汰でもう少し大きくなっているはずだが柚葵の学力が全国レベルなのと、城東の奴らが起こした事もあり今回は警察には知らせないとなった。



「千奈津、柚葵大丈夫だからな?」


泣き崩れる千奈津とそれを慰める晴。



二人を見ながら俺はボーっと突っ立っている。



もう何も言えなかった。



柚葵があの時まだ乗り込まないと言ったのは、自分一人でカタを付けるためだった。



こんな事になって航平が喜ぶはずはない。


「あ、柚葵…。」



晴の視線の先には、髪を下ろし力無さげに歩いてくる柚葵がいた。




「ゆ。ゆずきっ!」



千奈津が掛けていく。




「こんのっ、ばかっ!」



千奈津が思いっきり柚葵を殴る。




「…っ。なんでそんなに、一人でするのよっ!あたしたちがいるでしょっ!」


殴られた柚葵は何も言わず、下を向いたまんま。



「こんなこと、もうやめてよねっ!」



千奈津の目からは大量の涙が溢れている。



「そうだぞ。もうだめだぞ。」



優しく声かける晴は、千奈津の背中をポンポンとしながら柚葵を見る。



「ブルルル…」



その時、校門に一台のバイクが止まる。



「…あ、上城 稀里。」



バイクに乗っていたのは、あの有名な椿鬼の6代目総長、上城 稀里だった。




「柚葵、来い。」



上城稀里は柚葵を見ながら、手を伸ばす。



「…。」



柚葵は無言のまま、上城稀里に近づく。



「みんな、ごめん。また明日。」



柚葵はそう言って、上城稀里に乗せられ、何処かへ行ってしまった。





「上城稀里って、柚葵のお兄ちゃんだっけ?」



千奈津が呟いたのを俺は聞き逃さなかった。