柑side




正直、ここ最近の柚葵は見ていられなかった。



だから、城東に様子見に行く、となったとき柚葵を止めた。





航平が襲われてからの今日まで、柚葵はずっと起きたまま、パソコンに張り付いている。





このまんま行くと、倒れてしまう。










「柚葵、大丈夫かな~。」




城東高校まで、おーしゃんから車で約10分。




近くまで車で送ってもらったが、あまり近すぎると警戒される危険性があるからここからは歩きで行くことにした。





「ずっと情報集めてるもんな。そろそろ危ないと思うけどな。」





千奈津は人の心理を読みとるのが得意だ。


小さな頃、社交界という探り合いの世界で育ってきたからだろうと思うけど。



だから、柚葵のサポートを安心して任せられる。



・・・・千奈津は気付いてないんだけど。





「柚葵さ、ほんとに仲間を手放したりしないよね。」





千奈津はアメを舐めながら淡々と言葉を連ねる。






「それが柚葵だもんな。」





柚葵と千奈津は中学の頃、同じ学校だったものの殆ど喋っていなかった。




親の言いなりでしかなかった柚葵と自分の道を行く千奈津。




正反対だった2人で無二の友人になるだなんて、誰も思ってなかった事だろう。






「俺ら、柚葵に出会えてよかったな。」





こうやって誰かのために動いてる柚葵を見ると、いつもそう思う。




だけど、それと同時に、いつも思う。






「自分が無理してる事、気付いてないんだろうね。」





苦笑いする千奈津。





いつ柚葵が壊れてしまうかと思うと、ヒヤヒヤする。