ザワザワと落ち着かないこの場所。






ここはおーしゃんの二階。




普段ならたくさんの人たちがあたしと同じようにサボる時に使ったりする。




まぁ、いわゆる『逃げ場』








その広い二階。



そこにおーしゃんに出入りしている全てのメンバーを集めた。





ほとんどが男で少しむさくるしいけど人数が多い方が好都合。






「よく、聞いて。」






あたしの言葉でしゃべり声は無くなる。






「航平が、何者かに襲われた・・・・。」




ごめん、航平。


こんなことみんなには知られたくないだろうけど。





「噂はほんとだったんだな・・・」

「ありえねぇ。」

「あの航平さんだぜ?」



あたしの言葉を聞いて、また騒がしくなる。





みんな、だいたいの予想はついていた様で。






「だから、みんなで情報を集めてほしい。」





誰が航平を襲ったのか、何で襲ったのか。





「些細なことでいい。何か分かったらあたしたち幹部に伝えて。」





リーダーがみんなにこんなお願いをするなんて、情けないと思う。だけど。








「絶対に、航平の敵をとるから。」







頼りないリーダーだけど、絶対に敵をとるから。






正直、あたしの目は涙がたくさん溜まっていた。




航平がやられた悔しさもあるし、みんなを不安にさせた事もあるし、何よりみんながついてきてくれなくなるのかもと思うと、何も言えなかった。








「・・・・も、もちろんです。柚葵サンっ!」






そんな時、声がきこえた。








「そんなの当たり前じゃないっすか!」





言ってくれてるのは、よく顔を見る若い男の子。




あたしについてきてくれる?





「みんな、そう思ってますよ。それに、そんなしょげている柚葵サン、見たくないですし。ですよね? みなさん。」





「そ、そうですよ!」


「おれたちがんばりますっ!」


「絶対敵とりたいですっ!」







次々とあたしに向かって応援してくれる声。






「あ、ありがとう・・・・。」





こんなリーダーだけど、ついてきてくれて。





ごめんね。







「柚葵。」






あたしの名前を呼ぶのは千奈津。








「柚葵は、みんなが認めるあたしたちのリーダーだよ。」








あたしの涙腺はそんなに強くない。





あたしの両目からは大きな雫がたくさん零れてきた。







「うっ・・・うっ・・・。」






航平を守れなかった事の悔しさ、支えてあげられなかった悔しさ、みんなの温かさ。







色んな感情が混ざって、あたしにはもう耐えられない。










「絶対に航平の敵、うつぞっ!!!」





「うおーっ!!!」







柑の掛け声で一斉に動きだすメンバー。





あたしには涙でよく見えないけれど。雰囲気で分かる。







「千奈津っ・・・。」





肩を撫でてあたしをあやす千奈津に顔を向ける。





エメラルドグリーンの綺麗な目があたしを見つめる。






「強くなる、ね。強くなるよ。」





「うんうん。」








結局その日は寝るまで泣きじゃくった。



こんなに悔しい想いをしたのは久しぶりだ。







明日から全力で情報を集めなきゃ。









あたしの頭の中は、航平のことでいっぱいだった。