手が、当たった。

 大切な鉢植達の埃を払い、声をかけ、水やりをする。いつものそれを、今朝は出来てなかったからとやろうとしたのだ。

 すると、勢いよく動いてしまった手が、当たったのだ。

 よりにもよって、私の大好きな、しかも思い出のある鉢植に。棚の2段目、右から3番目の鉢植、サルビアに。

「あ!」

 と声を出したときにはすでに遅く、サルビアの鉢植は宙を飛んで、棚から転がり落ちた。

 そして音を立てて割れてしまったのだ。

「・・・あああああ~・・・」

 ガックリ。

 私は情けない顔をして、しゃがみこむ。両手で、割れてしまって土の漏れでた鉢のカケラを集めた。

 うわあ~・・・もの凄いショックなんですけど~・・・。よりによって、このサルビアが。我が家の守護神、ヤツが合鍵置き場はここね、と決めたサルビアの鉢植を落として割ってしまった。

 秋にむかって赤い綺麗な花を咲かせる素敵な鉢植だった。

 ヤツがこの子の花言葉を教えてくれた時、その夜の玄関の光が漏れるのや、鍵が煌いて反射したのも覚えている。

「・・・ごめんね」

 私は葉や土をそっと撫でて謝った。