side・ハル







初めて会ったのは、12歳の春。

中学校に入学したその日に、私は彼とであって。


今でも、はっきり覚えてる。

昨日のことみたいに、鮮やかに。


あれは、8年前のこと。







教室の中に入れなくて、入口で固まっていたのは12歳の私。


今でもそういうところはあるけれど、あの頃は今以上に人と接することが苦手だった。

初対面の人ばかりの部屋に入っていくということが、私にとっては大きなことだった。



偶然、教室から出てきた男子にすら挨拶が出来ず、疎ましく思われていた。


分からなかったんだ。

友達なんていなかったから、他人との関わり方が分からないまま、中学生になっていたのだ。



そんな人見知りの私に声をかけたくれたのは、たった1人。




「おはよー!」


その言葉に、どれほど救われたことか。

その一言に、私はどれだけ助けられただろう。


恋に落ちるのに、時間なんて必要なかった。

一瞬だった。



明るい笑顔が好きだった。

目を細めて、笑うその顔が大好きだった。


止められなかったの。

自分でもどうしようもないほど、心は彼に惹かれていく。



紺野くんは、いつもクラスの真ん中にいた。

クラスの真ん中で、たくさんの友達に囲まれていた。


紺野くんの周りには笑顔が溢れ、彼もまたその
笑顔に応える。



私とは違う。

友達さえいない、私みたいな人間とは違う人。


紺野くんは、別の世界に生きる人だ。

私みたいな人間が踏み入ってはいけない、そういう明るい世界に住む人。


そう思っていた。



だから、近付けなかった。

いつも、遠くから見つめているだけだった。


離れた場所から、見つめることしか出来なかった。



憧れていたのだ。

ほんとはね、紺野くんの隣に立ってみたいと思ってた。


夢でもいい。

妄想の中だけでもいい。


ずっとずっと、願っていた。