ある夏の夜。


僕は自宅の縁側に座り、夏の夜を楽しんでいた。



昼間に比べれば、夜はだいぶ涼しく感じられる。



だけど今日はやけに蒸し暑い空気が、密着するように身体を包み込んでいた。


――それが、どうしようもなく心地悪い。




夏の夜は意外と好きな方だ。昼間の夏は嫌いだけれど。



昼なんかより、夜の方が断然良い。

だってこうやって縁側に出れば、無料で虫たちのコンサートを好きなだけ鑑賞出来る。



今日もさっそく、スズムシたちがリーン、リーンと鳴き始めていた。




それに夏の夜といえば、何と言っても星空が綺麗だ。



僕が住んでいるのは、周りが田んぼと山しかない典型的な田舎町。

隣の家との間には、膨大な広さの田んぼが広がっている。



だから家に居ると、人の気配を全く感じられない。



まるでこの広い世界に、たった一人取り残されたみたいだ。




澄んだ空気の上に広がる、真っ黒なキャンバス。

そこに散りばめられた無数の星屑たちを、静かに見上げていた。