それから三度ほどエリーシャの夜遊びにつき合った後、皇后オクタヴィアにエリーシャは呼び出された。

「おばあ様は、前々から夜遊びのことをよく思っていなかったからね。お説教かしら」
「夜遊びをしなければいいんじゃないですか?」

 皇女宮には、抜け道が二十箇所近くある。その全てを知っているのは皇族だけだ。

 いつだったか、エリーシャに連れられて夜遊びに出た時、ライナスとフェランに連れられて戻ってから使った抜け道は、「教えてもかまわない」道であって、半分裏口と化しているのだそうだ。

 そのため、皇女近衛騎士団の面々がその抜け道を見張っていても、エリーシャをとめることはできない。

 夜遊びにつき合わされるアイラは、そのうちの何本かは知っているが、それにしてもエリーシャが「人に教えてもかまわない」と判断したものだけで裏口以外に数本だ。

「前にも言ったでしょ、市井の生活を知るのも大切だって――ああ、その銀の髪飾りをちょうだい」

 ファナが髪を結い終えたのを確認して、エリーシャは自分で仕上げに銀の髪飾りを差した。