と、ここで大変なことにも気がついた。
 
「あれを野放しにしておくと大変なことになる」と言う台詞が出ると言うことは――皇帝にまで押しつけられたということじゃないか!

 夕食の雰囲気は、前回と大差なかった。皇帝の愛人たちは互いに火花を散らしているし、エリーシャは出された食事をちまちまとつついている。

 彼女が食べていないのは、誰も心配していなかった。淑女たる者、がつがつと食すべきではないのだ。どうせ、部屋に帰れば深夜まで酒盛りだ。

 リリーアは時々ちらちらとエリーシャに視線を向けているし、皇后オクタヴィアは厳しい視線で夫の愛人たちを睨めつけながら、それでも食事の手を止めることはない。

 こんな食事会、楽しいのだろうか? 同席しているだけでアイラの胃が痛くなってくる。

「あなた、フェラン様に取り入ってるんですって?」

 セルヴィスの侍女が話しかけてくる。いつもの不細工メイクのアイラをフェランがかまうのが面白くないのだろう。アイラは、ちらりと視線を向けて平然と答えた。

「逆よ、逆。お手軽に遊べる相手だと思われているだけ。何なら変わってあげましょうか?」

 平然と返しながら、アイラは密かに嘆いた。こんな空気に染まるつもりなんてなかったのに!