茶葉が開いていい香りがするまで十分に蒸らしてから、騎士団長はそれぞれのカップにお茶を注ぐ。

「今は何をしていらっしゃるのかしら?」
「わかりません。父の本を強引に皇女宮にお持ちになって、何かお探しになっているのは確実なんですけど」
「アイラ。お父上は何を研究していたんだ?」

 今度はイヴェリンがたずねる。

「それもわかりません。だって、わたし魔術師じゃないですし――でも」

 アイラは顎に手をあてた。

「ひょっとすると、幽霊を呼び出すとか――死者と話をするとか――死んだ人を生き返らせるとか――そういった類のことなのかも」
「なぜそう思う?」

 眼鏡の奥のイヴェリンの瞳が鋭い光を発した。

「何でって――」

 アイラは目を閉じる。頭の奥に父の研究所を思い浮かべた。

「このところ、父が集めたがっていた本は、魂とか幽霊とかそういった言葉が入った本が多くなっていて――」

 騎士団長と副団長は顔を見合わせた。静かにイヴェリンが一つの名前を口にする。

「クリスティアン様」

 ゴンゾルフは重々しくうなずいた。