アイラの様子に、エリーシャは首をかしげる。かまわずアイラは続けた。

「ここに来てから急にモテ始めたんですよね」
「モテ始めた?」

 行儀悪く床に立て膝をして、エリーシャはたずねる。

「ええ、フェラン様には誘われるし、セルヴィス殿下にも誘われるしで。わたしみたいな平凡な一般人を誘うからには何か裏があるんでしょうねぇ」

 と、ここでアイラは思いついた選択肢を上げた。

「ひょっとして、罰ゲームですか?」
「罰ゲーム?」
「ええ、皇女宮と皇子宮で何かかけてて、負けた人がわたしをデートに誘うとか」

 エリーシャは首を横に振る。

「そんなはずないでしょ。何が悲しくて侍女をデートに誘わなきゃならないんだか――フェランはともかく、セルヴィスの方は気になるわね」

 剣を握っているとは思えないほど、形のいい指先を顎に当ててエリーシャは考え込んだ。

「うぅん……アイラ」
「はいっ!」
「酒蔵からワイン持ってきて。あとチーズ」