夕食は、エリーシャの居間に集まって食べることになっていた。イリアが厨房から温かい料理の載せられたワゴンを押してくる。

 ファナはテーブルにクロスをかけ、食器を並べ、酒蔵からワインを持ち出し――と、アイラが留守にしている間に全ての用意が終わっていた。

「ごめんなさい、用意もしなくて」

 アイラが謝ると、二人とも笑う。

「いいって――大変だったんでしょう?」
「一日中、本を並べていたって聞いたけど」

 確かにあの作業は大変だった。まだ行っていないけれど、父の研究所はがらんとしていることだろう。

 準備を手伝わなかった分、食事の後片付けはアイラが一人で引き受けた。使った食器を厨房に戻し、ゴミを捨てる。

 ワゴンを厨房に置いて戻ってくると、侍女たちはすでに自分たちの部屋に引き取った後だった。

 本当にエリーシャの侍女というのは楽をさせてもらえるものらしい。エリーシャは戻ってきたアイラを手招きする。

「何か不自由なことはない?」
「ないですよ、別に――ああ、そう言えば」