「アイラ。イリアとファナを呼んできてくれる?」

 エリーシャの命令に、アイラは急いで立ち上がった。
 
 控え室にいるはずだった二人のことは、完全に頭から抜け落ちていた。無事だろうかと急ぎ足に廊下を歩いていくと、先に出ていたベリンダが二人を連れて戻ってくるのが見えた。

「敵は、非常に冷静だったようですね。この子たちは、無事でした。イリアの私室に身を潜めていたそうですが、危害は加えられていません」

 少しおびえた様子のイリアとファナだったけれど、必要以上に取り乱すことなく落ち着いていた。エリーシャに一礼し、黙って壁際に控える。

 クリスティアンの名を出さず、あえて「敵」という言葉を出したベリンダもまた、壁際へと身を寄せた。

 急に静かになったエリーシャは、手近にあったクッションを引き寄せてそこに顔を埋める。
 
 いつになく打ちのめされた彼女の様子に、アイラはどう声をかけたらいいのかわからずその場から動くことができなかった。