さらりとした口調で言うと、エリーシャはアイラを連れてその中に入っていった。彼女が進むに連れて、まっくらな通路にぼんやりとした明かりがともっていく。

「……魔術……ですか?」
「そう。つけっぱなしなのも問題でしょ? まあ、蝋燭と違ってつけっぱなしだからと言って火事になるわけじゃないんだけど――通路を歩く人に合わせて必要なとこだけ点灯するようにしてあるわけ」

 誰にもすれ違うことないまま、通路を通り過ぎると、皇宮の裏手に出た。

「あー、やっぱり外の空気はいいわぁ」

 エリーシャは大きく延びをして、アイラに手を差し出す。

「それじゃ、行きましょ」
「どこに?」
「あなたの家。欲しい物があるはずなの」

 皇宮に連れてこられる時は馬車を使ったが、それは正面の入り口から入ったから。裏口からならばそれほど遠いわけではない。

「エリーシャ様……」
「ん?」
「ここ通るってのはどうでしょうかねぇ?」

 アイラの家までの一番の近道は、歓楽街を通り抜けねばならない――治安がいいとは言えないのだ。